W杯南アフリカ大会・決勝トーナメントへ

昨日でW杯の一次リーグが終了した。全体的に欧州勢が不振だと言われる。フランス、イタリアが3試合で帰国の途に着くと大会前に予想した人は、かなり少数派だろう。しかし、商業主義が蔓延した現代サッカー界の過密日程のせいで、ヨーロッパの選手は全体的に疲弊してしまっている。それに加えて準備期間が短いのだから、調子が上がらないままに敗退が決してしまうことは想像に難くなかったというのが私の印象である。逆に言うなら、最終戦で決勝トーナメント進出を決めたイングランド、ドイツ、ポルトガル、スペインは立派だったといってよいだろう。だが、この2チーム同士が次の試合で対戦することになるとは、欧州勢にとって気の毒としか言いようがない。オランダもスロバキアとの対戦となるので、ベスト8には欧州から3チームしか進出することができない組み合わせになってしまった。90年代中盤のボスマン裁定以降、ヨーロッパへの一極集中に加速が進んだ現代サッカー界のヒエラルヒーに、そろそろメスが入ってもいい頃ではなかろうか。さもなくば、W杯はこれからもスポイルされ続けることになる。実際のところ、チームの完成度や試合のエンターテイメント性では、チャンピオンズリーグのほうが秀でているのは間違いないのだから。

そんな現代のW杯では、すでに巨額の富を手にした欧州の選手よりも、自分をアピールする場と捉える選手のほうがモチベーションが上がりやすいのだろう。南米から出場した5ヶ国がすべてベスト16に残ったのは、その象徴的な例といえる。アフリカは、20年ほど前までは個人の能力がすば抜けていた印象があるけれど、ある種の戦術にのっとってプレーする近年はどこか凡庸に感じられる。なんとなく欧州化したせいで、荒削りなその魅力が薄れてしまった。さらに近年、若いうちから欧州に渡るアフリカ人選手が多くなったせいか、ヨーロッパ人のように個々の主張ばかりが強くなっては、チームとしてまとまって勝ち進むことは難しいのかもしれない。その他では、米国、メキシコ、韓国、日本がベスト16に勝ち進んだ。北中米の米国、メキシコはともかく、アジアから2チームも勝ち残るとは衝撃的である。大会前からある程度の評判を聞いていた韓国はさておき、日本が勝ち残るとはまさにミラクルである。グループリーグで対戦したカメルーンやデンマークがお粗末だった側面は否めないが、いったいどのような魔法をかけるとチームがこれほど見違えるのだろうか。

そして決勝トーナメントからは、すべて一発勝負の世界になる。ここからが本当のW杯とも言えるし、予定調和の世界とも言える。過去に勝ったことがあるかどうか、これこそが勝つための条件である。その証拠に、W杯の決勝戦に進出したチームで優勝経験がなかったチームはこの30年で12年前のフランスだけ。さらに遡るなら、初優勝をかけてアルゼンチンとオランダが対戦した78年大会ということになる。そんなわけで決勝戦の組み合わせを予想すると、やはりブラジルvドイツまたはブラジルvアルゼンチンということになる。アルゼンチンは一次リーグの出来がよすぎたので、逆に先に失点したときなどに一抹の不安が残る。ドイツは次の相手がイングランド、勝ってもアルゼンチンという厳しい組み合わせになった。ブラジルは準々決勝で対戦することが見込まれるオランダが最初の山といえる。それ以外のベスト4は、実力が伯仲していてどこが勝ち進んでもおかしくない。南米勢は堅実だし、南米予選で高地での試合を強いられているので、チリ以外の4チームが南米からすべてベスト4まで勝ち残っても驚きには値しないだろう。

そして日本についてであるが、繰り返しになるがこのブログを書くに当たってまだ次の試合を控えているというのは驚きである。大会前に3試合で帰国の途に着く一番手に挙げていたのが日本だったのだが。しかし日本の世論というのはいい加減なものである。大会前にあれだけ批判的なことを書き並べておきながら、ちょっと2試合勝っただけで浮ついた記事の多いこと。挙げ句の果てに優勝までいけるというのには失笑を禁じえない。ベスト16に勝ち残ったこの段階で日本代表に関して書かれた個人のブログの批判的な記事に、サッカーを見る目がないだのとコメントが多数寄せられているのを見かける。そんなコメントしかできない低俗な連中は結果論でしか語ることができないわけで、サッカーの本質やW杯の難しさなどが理解できようはずもない。私個人は、大会前にまともなチーム編成もできなかった日本の監督に対しては批判的な考えを変えていないし、マグレ(奇跡的に決まった2つのFK)で勝ったからといっていい気になるなと思っている。細かく見ていくと、日本はDFに小さな失策が非常に多いし、中盤でミスしてボールを与えなければ日本にゴールを許すことはないように思える。次の対戦相手であるパラグアイは、見た感じは日本より中盤の動き出しが速いので、そのあたりを生かそうとするのではなかろうか。日本と同様、パラグアイもベスト8に進出したことはない国。98年のW杯でジダンのいないフランスと対戦し、延長戦にまで持ち込んだもののローラン・ブランにゴールデンゴールを許した悔しさを晴らすには、日本のような国との対戦はいい機会だと思っていることだろう。
[PR]
by akira-takeuchi | 2010-06-26 23:41 | サッカー
<< W杯南アフリカ大会・グループリ... W杯南アフリカ大会開幕 >>