W杯南アフリカ大会・グループリーグ終わった

今回の大会は現場へ行かなかったので、お茶の間で見たい放題テレビ観戦できる。自宅でW杯を見ることがこれほど楽なことだったとは、この12年間忘れていた感覚だ。実際のところ、現場へ行くと実際にスタンドで見る試合以外は、ニュースですら見ることはほとんどない。だから、どこのチームが勝ち進んで決勝トーナメントがどんな組み合わせになるかなんて、翌日の新聞を見るまで知らないなんてことはざらである。そんなわけで現場へ行っていると、大会に関わっているのにある種の疎外感のようなものを感じていたから、今回はフルにすべての試合に関わっているような錯覚を覚える。

そんなわけで、一次リーグの試合をテレビで20試合くらい見たが、まず驚きに値したのはニュージーランドだ。過去のW杯の歴史で勝ち点を挙げたこともなかったチームが、3試合連続の引き分け。これまでニュージーランドではW杯と言えばラグビーだったのだろうが、今大会を機にフットボールにもW杯があると知ったニュージーランド人は多かったことだろう。ラグビー人口が減少してサッカー人口が増えてしまっては困ろうが(実際に豪州ではそのような現実があるらしい)、来年ラグビーのW杯を開催するニュージーランドが今後W杯出場国の常連となるのかもしれない。

そして次に驚いたのがスロベニアだ。ロシアをプレーオフのアウェイゴール数でくだして本大会に出場したとはいえ、正直なところ私は少しスロベニアを見くびっていた。勤勉で個人のテクニックにも優れた11人が揃うスロベニアのサッカーをもっと見たいと願ったのだが、残念ながらイングランド戦のラスト30分ほどはイングランドにスタミナ面でもフィジカル面でもやや引けをとってしまい、前半に奪われたリードを追いつくことなくタイムアップの笛を聞いた。同時刻にキックオフされていた試合が終了間際のドノバンのゴールで米国が勝ったため、スロベニアのW杯はその瞬間に終わりを告げてしまった。またスロベニアのサッカーを見るのに4年(欧州選手権も含めれば2年だが)も待つのはあまりに長い歳月と言わざるを得ない。岡山県とほぼ同じ人口の国が日々の日常でどのようなサッカーを展開しているのか、その国内リーグを一度この目で確かめにスロベニアという国へ赴いてみたいものだ(今回の大会に出場している選手の多くは国外でプレーしているが)。

最後に開催国についてであるが、正直なところ南アフリカというと治安が悪い国というイメージしか抱いていなかった。旅行者の間でヨハネスブルクは治安が世界最悪と言われるのだから、それも無理からぬことであるが。しかし大会を通じて届く映像を見るかぎり、それほど治安がメチャクチャな国でもないように思えてきた。少なくとも、町行く人がすべて泥棒というわけではなさそうだ。治安だけでなく気候や食生活も違うため、胃腸の弱い私にとってアフリカ大陸という地はたしかに非常に高いハードルではある。しかしもしこの世に生を享けているうちにかの大陸を訪れることができたら、きっとそれは私の旅の歴史で大きなアチーブメントになるのだと思えるようになった。一次リーグの試合でスタンドには空席が目立ったが、その空席が私とアフリカ大陸との距離感をあらわしているのだと思うし、もし次にアフリカ大陸のどこかでW杯が開催されたなら、あの空席を私の身体で埋めてみたいものだ。

そして今夜おこなわれるドイツvイングランドは、私の旅の経歴に影響を与えた試合である。66年のW杯イングランド大会の決勝戦や70年メキシコ大会の準々決勝はリアルタイムで知らないが、トリノでおこなわれた90年のイタリア大会準決勝は私の脳裏に深く刻み込まれている。10年ほど前にユベントスの試合を見に、今はなきデッレアルピを訪れたが、スタンドについた瞬間に思い出したのはPK戦にまでもつれ込んだこの試合だった。さらにウェンブレーでおこなわれたEURO96イングランド大会の準決勝も印象に残る試合のひとつだ。この試合のPK戦でアンドレアス・メラーが決めた最後のペナルティキックは、いまだに私の脳裏から離れない。クロスバーに強くヒットして高い金属音とともにゴールネットに吸い込まれたあのPKと、それ以外の5人のドイツ人キッカーがことごとくサイドネットの上隅に沈めたペナルティキックは、外国でサッカーを見たいと思う私の背中を強く後押しした。蘭白共催となったEURO2000でも、この両国はグループリーグで対戦。その試合がおこなわれた日、私はオランダのアーネムでポルトガルvルーマニアの試合を見ていたし、その試合のあとでテレビでドイツvイングランドの試合を見た記憶がある。

これほど幾多の名勝負が残るドイツvイングランドの対戦は、歴史的背景もあって必要以上にヒートアップする。W杯は国家の威信をかけているとか、W杯では内容は二の次で勝つことだけが正義だとか、いろいろ論う人は多いが、さすがにこの対戦にかぎっては私も同調せざるを得まい。もし私がこの試合の現場に居合わせていたら、ゴッドセイブザクイーンを歌っていることは間違いないだろう。個人的にイングランド、そして英国に対する敬意を忘れてはいない。なぜなら私がはじめて訪れた外国がイングランドだったのだから。その選択が間違っていなかったから今の自分があるのだし、その後に欧州のほとんどの国でサッカーを見ることができたのだと確信している。しかし私の知る1980年代以降、代表ではイングランドはドイツの後塵を拝することの多いこと。その大いなる潮流は、少々のことでは変わりそうにないと事あるごとに痛感させられる。ゲルマン魂とライオンハート、ともに不屈の精神をもった民族同士の対決、そして伝統的に中盤のないサッカーでエンターテイメント性に乏しい国同士の対決、語りつくせばきりがないが、今夜の試合が私を今度はどこの町へ旅立たせるのだろうか。
[PR]
by akira-takeuchi | 2010-06-27 21:51 | サッカー
<< セリーグ公式戦・阪神v東京ヤク... W杯南アフリカ大会・決勝トーナ... >>