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ナビスコカップ決勝戦・FC東京v川崎フロンターレ

やはり、決勝戦というものには独特の雰囲気がある。今年は地元でのJ2しか見れていないせいか、満員のスタンドで試合を見ることに少しばかり興奮してしまった。両チームのサポーターともに、ほぼ90分間応援が途切れることがなかったのはすごいと感じた。この試合に懸ける意気込みをよく表していたのだと思う。私は午前中に諸般の事情があったため、スタンドに到着したのがキックオフのわずか10分前だったが、もっと早く着いておけば試合前の雰囲気にもっと浸ることができたのではないかと後悔したくもなる。

前半は試合開始から、川崎が攻撃を仕掛けてきた。はじめの15分ほどは、圧倒的に川崎が試合を支配した。FC東京が中盤でボールを失いすぎたともいえるし、川崎の守備がよかったともいえる。それにしても、両チームの選手ともボールタッチがやわらかく、ボールを奪ってからの選手の動き出しが速いこと。このレベルになると、マイボールになるとあっという間にボールがスペースに展開される。そして攻撃だけでなく、中盤での守備も素早い。ボールを保持しても、ちょっとボールとの間にギャップができるとDFがすかさず身体を寄せてくる。身体の寄せ方がうまいというか、身体を寄せるのが速いというか・・・、J2のスピードに慣れた私の目には、すべてが素早いと映った。

田舎に住む私にとって、FC東京も川崎も洗練された都会のチーム。名前を知っている選手は何人かいるが、普段どんなサッカーを標榜しているのかは、まったくといっていいほど知らない。最近ではテレビでサッカーは見ないし、J2がおこなわれる現場へしか行かないのだから、それも当然なのだが。前半、何度か迎えたチャンスを川崎がはずしたあと、20分過ぎにFC東京#28の放ったミドルシュートが決まって試合が動いた。ここまでFC東京のGKがいい守備をして川崎の攻撃を防いでいただけに、川崎にとってフィスティングのミステイク(?)は結果的に痛恨だったといえる。それまで圧倒的に攻めていた川崎も、この1点で流れをつかむことができなくなり、1-0のまま前半を折り返した。

やがて後半が開始された。後半は、開始からFC東京が攻撃を仕掛けてきた。そして後半になって初めてチャンスらしいチャンスを迎えた川崎が、その後CKを得た。しかしこのセットプレーから一気にFC東京が逆襲。絵に描いたようなカウンターで敵陣に達し、左から上がったクロスを#13が頭で押し込んで追加点を挙げた。このプレーのとき、FC東京は2人しか走っていなかったはずだが、その2人でゴールを決めてしまうのだから恐るべしといえる。少なくとも、私が見慣れたJ2では起こり得ないプレーだろう。そして後半30分以降、川崎は猛攻をしかけた。しかし放ったシュートはクロスバーをたたき、FC東京のGKが再三にわたって好守備を見せたこともあって、このまま2-0でタイムアップの笛を聞いた。

“勝ったことがあることが、勝つための条件である”とはアラン・プロスト(F1レーサー)の言葉だが、今日の試合はまさにその言葉を表すような展開にも思えた。これを具体的に説明するのは難しいのだが、どんな競技でも勝てば優勝という試合には独特の雰囲気があり、不確定要素が多くなる。その試合に勝つには、それを経験したことがある者のほうが圧倒的に有利なことは、過去の歴史が証明している。この日の川崎にはハードラックな結果となってしまったが、誰でもこの決勝戦でプレーすることは許されるわけではないのだから、せめて表彰式のときくらいまでは行儀よくして振舞ってほしかったと思う人も多いのだろう。

思うに、サッカー界の表彰式で準優勝メダルをすぐに外したのは、私が知るかぎり、バルセロナでおこなわれた99年5月のチャンピオンズリーグ決勝戦でのローター・マテウスが最初だった。この試合でバイエルンから退くことを決めていたマテウスにとって、受け入れがたい結末となってしまったこともあって、首にかけられた準優勝メダルを外したのだろう。それから10年が経過し、このシーンを見て育った子どもたちが、現在では大人になってJリーグでプレーしているのだから、マテウスの真似をしようと思う選手がいたとしても不思議ではない。しかし、この行為が様になるマテウスのような選手と、そうでない人の2種類の人種が世の中には存在することを知るべきだろう。

結局、川崎は準優勝の賞金(5000万円)を自主的に返還し、一部の選手には出場停止の処分を課したとか。まぁ・・・、表彰式での態度が悪かったからといって賞金を返せと言った主催者側も大人気ないとは思うが、テレビでも映っていたのだろうし、やはり世間の目というものがあるから仕方ないのかなという気はする。ただ、表彰式の最中に態度が悪いと目につく選手がいることに気がついたら、それを叱り飛ばすような存在の選手が川崎にいなかったのかどうか、それが気になる。チームとしてプレーする以上、味方を容赦なく叱咤する選手の存在は、チームが苦境に立たされたときほど大きいと思うのであるが・・・。

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by akira-takeuchi | 2009-11-07 09:13 | サッカー
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